私的児童文学100のリスト

2016年の「CREA」2月号の少年少女文学特集がとてもおもしろかった。そこで、私も自分なりに児童文学100のリストをり、2016年の1月27日から5月5日まで、1日1作品をツイッターで紹介していた。

「CREA」は大人向けの雑誌だから、ノスタルジーを感じるような選書。けれど、私は大学院で児童文学を専攻していたし、仕事で児童書を選んでいたこともあるので、2005年くらいまでの刊行のものもちょっと読んでいる。なので、ここでは甥っ子たちや友達の子どもにおすすめしたい本を選んだつもり。それから大好きな作品が多すぎるので、1作家につき1作品のみの紹介にすることに。

ツイッターで100のリストが完結したのでまとめたかったのだけれど、ようやく終わりました。書影付き。書影をクリックすると、Amazonの詳細ページに飛べます。

Sayaka Felixさん(@sayakafelix)が投稿した写真

■私的児童文学100のリストの選書ルール

100のリストを作るにあたり、決めたルールは以下の通り。
・1作者1に1作品しか選ばない
・小学校低学年から中学生くらいまでがいったんの読者の作品
・定番作品から、超個人的な好みまで
・今でも購入できる作品優先
・順序は気まぐれ

■私的児童文学100のリスト

1:ルイス・キャロル『不思議の国のアリス』
ディズニー版や簡約版で風変わりな登場人物や不条理な展開は知るだけでは惜しい、言葉遊びやナンセンスの数々。読むたびに、言葉を追い、想像し、解釈する喜びに浸れる。まさにワンダーランド的作品。

2:アストリッド・リンドグレーン『名探偵カッレくん』
「ピッピ」「やかまし村」「ロッタちゃん」シリーズ等、数々の傑作を送り出した著者。夏の日差しのなかで友達と奮闘する様子、大人になるときの気分を鮮やかに描いている。当時のスウェーデンの風景も楽しい。

3:神沢利子『銀のほのおの国』
日本の児童文学では珍しい、骨太のファンタジー作品。小学生の兄妹が厳寒の異世界を旅する冒険譚。過酷な生存競争と強さの意味、命の尊厳、知恵を使う大切さ、自分で選択していくこと。大切なことがずっしりと描きこまれている。

4:カレル・チャペック『長い長いお医者さんの話』
小説や戯曲も手がけたチェコスロバキアの文豪の児童文学作品。9編の短編が収められている。シニカルで時にシュール。ユーモアたっぷりのおとぼけを真顔で語るような雰囲気が楽しい。「郵便屋さんの話」が特に好き。

5:A・A・ミルン『プー横丁にたった家』
プーさんは詩人だ。はちみつ壺にはまって困っているだけじゃない。とぼけた雰囲気で真理を語る。そして作品の最終章。幼児から少年へと成長していくクリストファー・ロビンとプーさんの会話は、大人になってこそ味わえる。

6:ジェラルディン・マコーリアン『不思議を売る男』
エイルサ母娘の前に現れた謎の男MMC。母親の営む古道具屋で働くことになった彼は、品物にまつわる奇妙な話をかたり、お客を引きつける。スパイスの効いた短編集のような作品だが、枠構造も驚きに満ちている。

7:アーサー・ランサム『ツバメ号とアマゾン号』
夏休み。大人と最低限のルールを守る約束をして、きらめく湖を帆船に風を受けて渡り、子供達だけで無人島ですごす。自由!自由!自由!主人公達の冒険に胸をときめかせ、一緒に過ごしているような気持ちになる物語。

8:メアリー・ノートン『床下の小人たち』
物をよくなくす子どもだったこともあり、うちにも小人がいるかも、と想像しながら楽しんだ。人物描写も素晴らしい。人間の振る舞いや物の扱い方、命について考えさせられる。ジブリ映画にもなったが、私は原作の方が好き。

9:フィリパ・ピアス『トムは真夜中の庭で』
アパート住まいの親戚に預けられて退屈していたトムは、ある夜、時計が13回鳴ると裏庭に美しい庭園が現れることに気づく。夜毎に庭園を訪れるトムの喜びと、時と年を超えた心の交流にひたるタイムファンタジーの傑作。

10:椰月美智子『しずかな日々』
自分は悲しくあるべきと決め込んで、人とうまく関われない少年。彼の人生の転換期となった輝かしい日々を、淡々と綴った作品。縁側のある祖父の家の佇まいや、友達と過ごす夏休み、想像に溢れた探検など、懐かしさがじわりと広がる。

11:モーリス・デュリオン『みどりのゆび』
幼稚園の頃は花屋さんになりたかったので、この本が好きだった。低学年向けの語り口だが、主人公チトの犯罪、病気、貧困、戦争の原因に関する素朴な疑問と発見には、大人になってもはっとさせられる。永遠に古びない作品。

12:ローラ・インガルス・ワイルダー『大きな森の小さな家』
開拓時代の北アメリカが舞台。自然の中でほぼ自給自足の暮らしを営む一家の、質素だが豊かな生き方と、登場人物の成長を描く。狩猟をする父さんの頼もしさ、なんでも作れる母さんの包容力が魅力的。

13:ジュール・ヴェルヌ『二年間の休暇』
『十五少年漂流記』という名でも知られる作品。事故で8歳〜14歳の少年たちが無人島に流れ着いてしまう。住処や食料の確保、自治の様子、危機への対応に胸を躍らせながら読んだ。1987年のテレビアニメも好きだった。

14:キャサリン・パターソン『ガラスの家族』
実の親に捨てられ、里親のもとを転々としてきた11歳の少女ギリーは、怒りで張り詰め、頭の良さを持て余す問題児。理想とは程遠い里親のもと、次第に「家族」を見出していく。引用されたワーズワースの詩が効いている。

15:E・L・カニグズバーグ『魔女ジェニファとわたし』
エリザベスは転校先のNY郊外の小学校で、自称魔女の黒人少女ジェニファと出会い、弟子入りをする。マクベスを愛読するような孤高の存在ジェニファと主人公の、心の動きや関係性の変化の描写がすばらしい。

16:高楼方子『時計坂の家』
美少女のいとこマリカに誘われ、祖父の住む港町の古い洋館に滞在することになったフー子。祖母の失踪の秘密を解き明かそうとして不思議な世界を垣間見る。東欧風のノスタルジックな雰囲気と、謎に包まれた洋館の不穏な気配が好きだった。

17:佐藤多佳子『サマータイム』
五年生の進と一つ上の姉、佳奈は、進の二つ年上で、ジャズピアニストの母親と二人暮らしの大人びた少年、広一と出会う。ピアノの響きとともに初恋の甘酸っぱい気持ちや、眩しい夏の光、夏の終わりの寂寥感を閉じ込めた爽やかな作品。

18:佐藤さとる『だれも知らない小さな国』
子供の頃、一度だけ山の中で小指ほどの小人「こぼしさま」に出会った主人公。引越し、戦争を経て大人になった彼は、再びその山に戻り、こぼしさまに再会する。小人たちが潜んでいる気がして、自然を大切にしたくなる作品。

19:ルーマー・ゴッデン『ねずみ女房』
人家で平凡に生きるねずみの女房が、捕えられたハトと交流するようになるが、ハトの野に焦がれる様に心を打たれて、籠から逃がしてやる。自分を貫き、異なるものと関わった経験が一生を照らす。生き方を考えさせられる作品。

20:松谷みよ子『ふたりのイーダ』
「モモちゃん」「おばけちゃん」「太郎三部作」シリーズを始め、数々の作品を送り出した著者。この作品は戦争と平和、原爆をめぐる作品群のひとつ。とても怖かったけれど、『まちんと』とこの作品は読んでおいてよかったと感じる。

21:ロアルド・ダール 『マチルダは小さな大天才』
4歳でディケンズを読むような天才少女マチルダが、大好きな先生のために、知恵と超能力で理不尽な大人をやり込める。ブラックユーモア満載だが温かい筆致で、境遇に負けない山椒粒のようなマチルダが小気味良い。

22:ペーター・ヘルトリング 『ヨーンじいちゃん』
おじいちゃんと同居すべき否か。そんな家族会議から始まる作品。頑固さと柔軟さが同居したおじいちゃんとの生活を、時系列で描く。幼い頃は登場人物の子供達に共感したが、今読むとこんな老人になりたいと思う。

23:オトフリート=プロイスラー『クラバート』
東欧の伝説をもとにした作品。「魔法使いの弟子が修行の末、魔法の力比べで親方に打ち勝つ」という、よくあるストーリーではあるのだが、作品には死の影と緊迫感が漂い、仄暗い厳しい。読後のイメージは雪解けの春。

24:柏葉幸子『りんご畑の特別列車』
習い事の帰りにユキが列車に乗っていると、この定期は使えないと言われて列車を下ろされてしまう。不思議な世界は驚きに溢れ、単純に純粋にわくわくしながら出来事を楽しめる。くたびれ果てた帰りの電車でふと読みたくなる本。以前のイラストの方が好きだったので、両方のリンクを貼っておきます。

25:バーネット『秘密の花園』
メアリーは、両親を亡くして荒涼としたムーア(荒れ野)の屋敷に立つ伯父の家に引っ越してくる。荒野の力強さ、屋敷の庭で見つけた素朴な喜び、見つけた閉ざされた庭。ヒースが咲き、新緑が芽生える様子に、春の奇跡を感じさせる作品。

26:斎藤惇夫『冒険者たち ガンバと15ひきの仲間』
ネズミのガンバと仲間の冒険と死闘、友情、家族、愛と別れの物語。壮大な冒険に読むたびに熱くなる。知り合いの男性が「小3までは本なんか読まなかったけれど、この本で読書の楽しさを知った」と教えてくれた。

27:岡田淳『びりっかすの神様』
4年1組にはびりっかすをとった人だけに見え、話ができる「びりっかすの神様」がいる。びりっかすになることで見えてくるさまざまなこと。定量的なものばかり優先される世の中で、違う視点を得られる教室の中のファンタジー。

28:ケストナー『飛ぶ教室』
ドイツの全寮制男子校を舞台にした物語。様々な境遇にある男の子たちが喧嘩をしたり、企画をしたり、ステキな先生を慕ったり。生きていくうえでの「尊いこと」とは何かを考えさせられる、不朽の名作。

29:河合雅雄『少年動物誌』
河合隼雄さんのお兄さんで霊長学者の著者。丹波篠山の豊かな自然の中、少年たちがいきいきと活動する様子が描かれている。児童文学を専攻していた学生時代の課題で、みんなで大笑いしながら読んだ。

30:安房直子『まほうをかけられた舌』
亡くなった父のレストランを継いだ洋吉は、怠け者だったために父の味を知らない。途方に暮れていると、レストランの地下室で小人が助けてくれる。やがて魔法が消えたとき、本当の財産に気づき、自力で歩き始める姿が清々しい。

31:アラン・ガーナー『ふくろう模様の皿』
荻原規子さんや上橋菜穂子さんにも印象的と評される作品。屋根裏の皿のふくろうの絵を写し、形作った時、判然としない「何か」が起こる。重く不穏な雰囲気とミステリアスな展開、美しいラストが印象的。ぞわっと怖い物語。

32:ミヒャエル・エンデ『モモ』
「時間て、ちっともとまってないで、動いていく。【中略】(時間とは)一種の音楽なのよーいつでもひびいているから、人間がとりたてて聞きもしない音楽。でもあたしは、ときどき聞いていたような気がする。とってもしずかな音楽よ」

33:エリザベス・エンライト『ゆびぬきの夏』
ガーネットは川で銀の指ぬきを見つける。その後から、ゆびぬきに魔法の力があるかのように次々と幸運が起き、困った出来事すら最後には冒険だったと思えるようになる。素朴なアメリカの農園の一夏を満喫できる物語。

34:梨木香歩『西の魔女が死んだ』
まいは学校に行けなくなり、英国人の祖母のもとで春から初夏までを過ごすことになる。そこで祖母から魔女になるための訓練を受けるが、修行の肝は「自分で決める」ということだった。地に足ついた暮らしの美しさが印象的な作品。

35:ルイーズ・フィッツヒュー『スパイになりたいハリエットのいじめ解決法』
小説家志望の主人公が、小説家は人間を知らなければと、周囲の人々をスパイをし始める。ある日、シニカルな描写溢れるスパイノートを友達に読まれ、それが元でいじめが始まってしまうが…

36:富安陽子『ドングリ山のやまんばあさん』
やまんばあさんは296歳。なのにスーパー元気で好奇心いっぱい。人間の子供を化け物と思いこんだり、車と競争しようと並走して運転手を驚愕させたり。本嫌いな子も爆笑しちゃうはず。

37:アルフ・プリョイセン『小さなスプーンおばさん』
体が突然小さくなってしまうおばさん。ひどく動揺しそうなものを、おばさんは「あらら」程度で順応し、知恵を絞るのは「どうやって家事を済ますか」。おいしそうな食べ物がいっぱいで、安心して楽しめる本。

38:宮沢賢治『銀河鉄道の夜』
少年ジョバンニは友達のカムパネルラとともに夜空をかける銀河鉄道に乗りこみ、星座から星座へと渡る旅に出る。冒頭の天体の授業から活版所のシーン、旅の途中の出来事の描写が美しく、旧仮名遣いの雰囲気にも酔いしれながら読んだ。

39:重松清『きよしこ』
一人の少年が吃音とともに成長していく物語。コンプレックスを認めて生きること、外の世界へ足を踏み出していくことの大切が伝わる。文体も展開も自然ですっと届く、温かな作品。

40:ルイーザ・メイ・オルコット『若草物語』
南北戦争時代を背景に、優しい母と美しく慎重な長女、おてんばの次女、控えめで優しい三女、おしゃまな四女の四姉妹が質素ながら明るい生活を送る姿を描いた物語。ライムの塩漬けが食べたかった。

41:ケネス・グレアム『たのしい川べ』
モグラ、川ネズミ、ヒキガエル、アナグマ等の動物たちの日常生活を描いた物語。葦の間をそよ風、牧神との出会い、ごちそうを入りバスケットを持っての船遊び、黄金の麦畑の散歩等、牧歌的な描写が楽しい。

42:角田光代『キッドナップ・ツアー』
母と離婚した父親に誘拐され、放浪の旅に出る小5のハル。嘘をつく、飲酒運転をする、すぐ根を上げるダメな父親を宥めたり、諦めたり。父と心の交流が生まれるわけでもない。それでも何か染み渡る作品。

43:J・R・R・トールキン『指輪物語』
オックスフォード大教授が、言語学、神話、宗教に影響を受けた壮大な世界を構築し、宝を”捨てに行く”物語を作り上げた。世界を支配する指輪が暗示するものをいろいろと考えさせられる。長い作品だが、映画より原作が好き。

44:福永令三『クレヨン王国七つの森』
自然観察クラブの7人は宿題を携え、森の山小屋に7日間のキャンプに出かける。宿題の内容は「弱点の克服」。登場人物たちは森でネコイヌや歌う蜘蛛など、クレヨン王国の住人たちと出会い、宿題を片付けていく。清々しい物語。

45:ロイス・ローリー『ギヴァー 記憶を注ぐ者』
争いも飢餓も貧困も、職業選択を誤る不安も、肉体的な痛みすらない。あらゆる苦痛が取り除かれた理想郷のようなコミュニティの秘密を知った時、主人公は幸せとは何か、完全な世界とは何かを考え始め行動を起こす。

46:ヴァージニア・ハミルトン『雪あらしの町』
もうすぐ13歳のブレアは、周りよりも薄い色の肌や髪、母親の職業や父親の不在からか、常に人からじろじろ見られている気がしている。彼女が人種や社会的身分、親の姿を受け入れていく姿を描く。今日は著者の誕生日。

47:ルース・スタイルス・ガネット『エルマーのぼうけん』
9歳のエルマーは、親しくなった野良猫から、どうぶつ島に捕らえられているりゅうの子の話を聞く。りゅうを助け出すことを決めたエルマーは家を抜け出し、船に忍び込み、機転を利かせて危機を切り抜ける。

48:手島悠介『ふしぎなかぎばあさん』
鍵を失くして困っている「鍵っ子」に声をかけ、たっくさんの鍵の束からその子の家の鍵を探して玄関を開けてくれるかぎばあさん。大きなカバンから食材を出して料理を作ってくれたり、紙芝居をしてくれたり。鍵っ子に憧れた。

49:アン・ファイン『フラワー・ベイビー』
男子校の理科の授業の一環として、悪ガキのサイモンは小麦粉袋の赤ちゃん(フラワー・ベイビー)を「育てる」ことになる。3週間にわたる擬似育児体験をすることで、家を出て行った父のこと、自分のことを考え直す。

50:E・B・ホワイト『シャーロットのおくりもの』
静かな農場で暮らす、子ブタのウィルバーと蜘蛛のシャーロット。シャーロットがハムにされるウィルバーを救うために起こした奇跡の物語。様々な動物や人間が、それぞれに生きる姿を真摯に描く。爽やかな読後感。

51:フィリップ・プルマン『黄金の羅針盤』
守護精霊=ダイモンあり、素粒子と五次元の理論を下敷きにしたのではと思われる世界観ありの壮大なファンタジー三部作の1作目。冒険物語として楽しめるが、根底には「神とは何か」「大人になるとは」が貫かれ、大人にも読み応えのある作品。

52:トーベ・ヤンソン『たのしいムーミン一家』
書籍のムーミンはキャラ化されたもののイメージとは一味違う。世間体を気にしたり、ビビリ屋だったり、独善的な親切を押し付けたりと私たちに似ている人たちがわさわさと暮らすムーミン谷だ。素朴な挿絵も大好き。

53:アン・ブラッシェアーズ『トラベリング・パンツ』
読書に興味を持たずにきた中学生くらいの女の子向け。仲良し4人組の女の子達が見つけた、4人すべてをセクシーに見せる一本のジーンズ。初めて別々に過ごす夏、それを順番で履いて過ごすと特別なことが起きる。

54:ルイス・サッカー『穴』
無実の罪で強制キャンプに入れられ、暑い荒野でひたすら穴掘り作業をさせられる少年スタンリー。ある日、彼は仲間の少年とともにとうとう脱出を企てる。一見関係のないエピソードが次々に繋がることに気づく時、読む喜びは倍増する。

55:マーガレット・マーヒー『魔法使いのチョコレート・ケーキ』
石井桃子さんが選んだマーヒーの作品集。表題作は邪悪な存在だと思われている孤独な魔法使いが子供達を招待して、手作りチョコレートケーキを食べさせたいと願うお話。

56:ヒュー・ロフティング『ドリトル先生航海記』
動物と話ができる動物のお医者さん、ドリトル先生と動物たちのユーモラスな物語。英語を習ってこの先生の名前がDolittle(わずかな働き)と気づいた時の衝撃。骨太でリズムの良い翻訳は井伏鱒二によるもの。

57:ラッセル・E・エリクソン『火曜日のごちそうはヒキガエル』
みみずくに捕まり、火曜日に食べられる予定のヒキガエル。火曜日まで奇妙な同居生活が始まり……と、話の展開は読める。でも、ご機嫌斜めの夫や怖い上司などとの対応を考える時、この本は役に立つ。笑

58:オー・ヘンリー『最後のひと葉』
自分はもう生きられない、最後の葉が落ちたら自分も死ぬと決め込んだ若い女性のために、貧乏老画家がとった行動とは…。岩波少年文庫版は「賢者の贈り物」「警官と讃美歌」など14の短編が収められ、読みやすいのでオススメ。

59:那須正幹『ぼくらは海へ』
ズッコケ三人組の作者だが、趣を異にする。少年達が船を作る一夏の物語には、子供ゆえの困難と孤独、絶望が描かれ、結末では児童文学にありがちな予定調和を完全否定する。安易な解決、希望を求めない、埋立地のある町のリアリティー。

60:ダイアナ・ウィン・ジョーンズ『魔法使いハウルと火の悪魔』
ソフィーの怒りっぽく詮索好きなところ、ハウルの軟弱で繊細で意地悪でなところ等、キャラクターの造形も巧みで、細部の仕掛けも豊か。しっかりとした正統派ファンタジー。

61:ジーン・ウェブスター『あしながおじさん』
孤児院育ちのジュディが資産家=あしながおじさんに文才を見込まれて大学進学のための援助を受け、彼に学びと喜びに満ちた大学生活を報告する手紙を書く。ジャービーぼっちゃんの正体がわかったときはドキドキした。

62:斉藤洋『ルドルフとイッパイアッテナ』
黒猫ルドルフがボス猫イッパイアッテナと出会い、ノラ猫生活を謳歌する、知恵と友情の物語。子どもの頃はルドルフの視点で楽しんだけれど、大人になって読むとイッパイアッテナの言葉が響く。「教養」という言葉が印象的。

63:エニド・ブライトン『おてんばエリザベス』
「おちゃめなふたご」シリーズの著者が書いた、全寮制の学園物語。わがままに育った主人公は窮屈な寮生活から解放されるために「悪い子になろう」と決心するけれど…。白と青で統一された寮の部屋や学園自治に憧れた。

64:ルーネル・ヨンソン『小さなバイキングビッケ』
勇猛なバイキングの族長の息子、ビッケ。小さく暴力が大嫌いなビッケを父は臆病者というけれど、ビッケは知恵を使って様々な困難を切り抜ける。ビッケの知恵を素直に認められる父と、ちゃんと締める母がステキ。

65:C・S・ルイス『ライオンと魔女』
ナルニア国物語全7巻の1巻目。4人のきょうだいが、衣装だんすから迷いこんだナルニア国で、フォーンや物言う動物たちと出会い、冒険をし、戦って、正義と赦し、人間の在り方を考える。小学生の頃、寝る間を惜しんで読んだ。

66:湯本香樹実『夏の庭』
人が死ぬ様子を見たいという残酷な動機から、ひとり暮らしの老人の観察し始めた小6男子3人。ゴミ出しを押し付けられたり、成り行きで掃除したりするうちに、老人と交流が始まる。忘れられない夏の日々。庭いっぱいのコスモスが美しい。

67:森絵都『宇宙のみなしご』
陽子は弟のリンと真夜中に他人の家の屋根にのぼる遊びを秘密の楽しみにしていた。単なる遊びなのに、それに意味を見出してしまった七瀬さん、オタク少年キオスクがなりゆきで加わり、事件が起こる。読後にタイトルが響いてくる物語。

68:マイケル・ボンド『くまのパディントン』
ブラウン夫妻はパディントン駅で「このくまをよろしく」という札をつけて座ってクマを見つける。帽子を脱いで丁寧に挨拶をする彼は、ブラウン家の一員として迎えられる。彼の周りで起こるドタバタ劇が楽しい。挿絵も◎

69:モーリス・ルブラン『ルパン対ホームズ』
ルパンの鮮やかな手口が楽しい怪盗ルパンシリーズと、難事件を見事な推理で解き明かすコナン・ドイルのシャーロック・ホームズシリーズ。二つを楽しんでいたので、この作品には「こんなことがありなのか」と心底驚いた!

70:サン=テグジュペリ『星の王子さま』
小3くらいのときに初めて読んだ。文章は読み取れても腑に落ちないところがあり、読み飛ばしながら読んだ。よくわからないが、そういって捨て置けない何かがあった。成長するごとに度々出会い、そのうちに大切な本になった。

71:ジョナサン・スウィフト『ガリバー旅行記』
初めに子ども向け簡易版を読み、その後福音館古典童話版で全体を読んだ。小人国、大人国だけでなく、馬の国、ラピュータなど不思議な国とともに日本も登場する。日本が登場するなら小人国も…?と夢想して楽しんだ。

72:ジョーン・エイキン『しずくの首飾り』
猫が上に乗った時にだけ願いが叶う灰色の足拭きや、空のかけらが入ったパイなど、昔話風語り口の8話の物語が収められた短編集。表題作は、細い銀の鎖に雨つぶがついた首飾りをめぐる物語で、そんな首飾りに憧れた。

73:アーシュラ・K・ル=グウィン『影との戦い』
ゲド戦記シリーズ1作目。魔法使いの学校に入ったゲドは、驕った気持ちで禁断の呪文を唱え、自らの影を呼び出してしまう。シリーズ全体が人間の内面を深く掘り下げる成長物語になっていて、大人も十分楽しめる。

74:ルーシー・M・ボストン『グリーン・ノウの子どもたち』
父と継母とはソリが合わず、母方の大おばの所で休暇を過ごすことになった7歳のトーズランド。夜中に川を渡ってたどり着いた古いお屋敷は不思議に満ち、三百年前の子供たちの気配を感じられる場所だった…

75:ダニエル・デフォー『ロビンソン・クルーソー』
抄訳版も楽しく読める冒険物語だが、分厚く宗教色たっぷりで時代がかった完訳版がおもしろい。金儲け重視の薄い信仰しか持たなかった主人公が生かされているという実感を得たり、進化をしていく姿に引き込まれる。

76:マリー・ハムズン『小さい牛追い』
放牧のため、麓から牛を連れて山に上って夏を過ごす、ノルウェイの農場一家。現代の感覚からすると放任主義のように見える両親のもと、4人きょうだいは大胆に遊んだり仕事をしたり。素朴な生活ときょうだい関係が楽しい。

77:ベバリイ・クリアリー『がんばれヘンリーくん』
小3のヘンリーくんはやせこけた犬を拾い、こっそりとバスに乗せて家に連れて帰ろうとする。しかし途中で犬が暴れ出し…。アメリカの男の子のドタバタな日常生活が楽しく、友達が増えたような気持ちになった。

78:スティーヴンソン『宝島』
著者が息子に語り聞かせるために捜索した海賊の冒険物語。片足で残忍、大胆不敵で優しく、誠実で裏切り者のジョン・シルヴァーが魅力的。マンガ『ワンピース』を読むほど根気のある男子はこっちもぜひ。

79:エリナー・ファージョン『ムギと王さま』
さまざまな味が楽しめる短編集。空想と現実が絶妙に混ざりあう作品のおもしろさもさることながら、作者まえがきが大好き。作者が、金色のほこり漂う「本の小部屋」で、宝探しのように本を選び、夢中で読む姿に共感する。

80:P.L.トラヴァース『風にのってきたメアリー・ポピンズ』
東風の吹く日にやってきたメアリー・ポピンズ。うぬぼれ屋で気位が高く、不機嫌で容赦ないナニーだが、彼女といると不思議なことが次々と起こる。「ベッドに悪い側がある」など印象的な話がいっぱい。

81:J・M・バリー『ピーター・パンとウェンディ』
ファンタジーの名作。ティンガー・ベルの粉をふりかけてもらって、人魚と海賊のいる子供だけの国ネバーランドへ。子供の頃は不思議な世界に胸踊らせながら読んだ。ケンジントン公園のピーター・パン像が懐かしい。

82:ジクリト・ホイク『月の狩人~アマゾンで見た私だけの夢~』
16歳の少女シェバは父とカメラマンとともに未知の部族を探すため、アマゾンの奥地に入っていく。幻想的な雰囲気と、文化への眼差し、部族の死生観・価値観などさまざまな要素が味わえる深い作品。

83:エレナ・ポーター『少女パレアナ』
孤児のパレアナは、気難しい叔母に引き取られたが、すべての物事に美点を見出す「喜びの遊び」というゲームで自分の環境を気持ちの良いものに変えていく。やがてゲームは町中に知られるようになり、次々と奇跡が起こり始める。

84:角野栄子 『魔女の宅急便』
13歳のキキはしきたりに倣い、縁のない町で働きながら一人暮らしを始める。しかし使える魔法は「飛ぶこと」のみ。自分の居場所を作ること、働くこと、マイノリティになること、自立すること…多くのことの本質に触れた作品。

85:伊藤たかみ『ミカ!』
小6の男勝りなミカを、双子でインドア派のユウスケが見守る。両親の不仲や姉の家出、同級生との関係。思春期の微妙な心を丁寧に描いた作品。二人が隠れて飼う、涙で成長し、キウイを2日で1つ食べる不思議な生き物「オトトイ」が意味深。

89:L・M・モンゴメリ『赤毛のアン』
手違いから老兄妹に引き取られた孤児のアン。おしゃべりで夢見がちなアンは失敗をやらかしてばかり。しかしそれが不思議と二人や周りの人の気持ちを和ませる。温かい物語。アンとダイアナが飲むいちご水に惹かれた。

90:シンシア・カドハタ『きらきら』
60年代アメリカ。日系人のケイティは美しい姉リンから「きらきら」という言葉と日常の中の輝きを教わる。差別と貧しさはあれど、姉がいれば大丈夫。そんなケイティの幸せを阻んだのはリンの病魔だった。静かな筆致が胸を打つ。

91:ヨハンナ・シュピリ『ハイジ』
アルプスの山小屋でおじいさんと暮らすハイジ。足の悪い少女クララの遊び相手として、都会のお屋敷に引き取られることになるが…。自然の美しさとチーズ等のおいしそうな描写が印象的だった。信仰を鍵にして読むとさらに楽しめる。

92:ポール・ギャリコ『七つの人形の恋物語』
仕事も身寄りもなく、セーヌ川に身投げしようとしていた少女ムーシュに話しかけ、居場所をくれた七つの人形たち。しかし人形を操る男は身勝手で冷たく非情で…。物語に引き込む絶妙な語り口で不器用な人々を優しく描く。

93:ハンス・ペーター・リヒター『あのころはフリードリヒがいた』
ユダヤ人の友達を持つ「ぼく」の目を通して、ヒトラー政権下のドイツが反ユダヤの嵐に巻き込まれていく姿を描く。変化のうねりの大きさと、人々の瞬時の変貌に考えさせられる。今読まれてほしい本。

94:ジャンニ・ロダーリ『チポリーノの冒険』
野菜と果物の暮らす国で、玉ねぎ坊やチポリーノが無実の罪で牢屋に入れられた父を救い出そうとする。自由と勇気の大切さをユーモアをこめて描く冒険物語。個性的だが身近にいそうな登場人物たちがおもしろい。絵も好き。

95:ヒルダ・ルイス『とぶ船』
ピーターが薄暗い店で手に入れた古い船は魔法の船。この船でピーターたち4人きょうだいは時と場所を超えて冒険の旅に出る。最終章で、大人の入り口に立ったピーターが下す思い切った決断は、大人になって読むとなお味わい深い。

96:リチャード・アダムズ『ウォーターシップ・ダウンのウサギたち』
主人公はうさぎだが、かわいらしいファンタジーではなく反逆と抵抗、知恵と勇気の物語。村の危機を察知して新しい村を築くまでの冒険を描く。読むたびに新しい発見がある「文学」らしい児童文学。

97:ウォルター・デ・ラ・メア『孔雀のパイ』
「幼な心の詩人」と言われるウォルター・デ・ラ・メアの世界は、安易に決着付けない不思議さに満ちている。言葉から広がる想像を膨らませれば、異世界が丸ごとひとつできあがるような詩の数々。装丁もファンタジック。

98:O・R・メリング『歌う石』
自分のルーツを探るためにアイルランドへ出かけたケイは、古代アイルランドに迷い込む。そこで出会った少女とともに4つの宝を探す旅に出て、民族の栄枯衰退の様子を目の当たりにする。神話や伝説彩られた壮大なファンタジー。

99:アリソン・アトリー『時の旅人』
療養のために農園にやってきたペネロピーは16世紀の荘園に迷い込み、王位継承権をめぐる歴史上の事件に巻き込まれる。英国の田舎の長閑な美しさ、ハーブの香り、中世の生活の華麗さと人間模様が魅力的。大切に読みたい物語。

100:ジョーン・G・ロビンソン『思い出のマーニー』
心を閉ざした孤児のアンナは、心配した養母の計らいで海辺の田舎町でひと夏を過ごすことに。そこで彼女はマーニーという少女と友達になるが、ある日マーニーは消えてしまう…。謎が解け、愛に満ちた結末が見事。

今回の児童文学連続ツイートをするにあたり、多くの本を読み直して、児童文学のあなどれなさに改めてびっくりした。

毎日決まったテーマでツイートするのが、けっこう好きだ。ただ忙しいとしんどくなるから、100日連続等と期限を決めるのが私には向いているみたい。2015年は1989年の旅同日ツイートをやっていてとても楽しかった。2016年はこの私的児童文学100のリスト。2017年は何をしようかな。

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