アーティストの鈴木康広さんについて

構成を担当した、アーティストの鈴木康広さんと、エシカルプランナー兼ギャルモデルの鎌田安里紗さんの対談記事が公開された。エシカル対談シリーズの10回目の記事。安里紗さんの引き出し方が上手で、人選がすばらしかったから、捨ての部分を作るのが申し訳なくて、毎回記事が長い。

大切なのは「自意識過剰」に気づいて、育てること【アーティスト鈴木康広】
http://qreators.jp/content/496

このシリーズの仕事は、私個人の興味と合致していたから、毎回音声を何度もなんども聞いて、細かく文字起こしをした。

■言い澱みまで文字に起こすと、見えてくるものがある

このシリーズの仕事は、私個人の興味と合致していたから、毎回音声を何度もなんども聞いて、細かく文字起こしをした。

すると、取材時にはキャッチできていなかったもの、例えば言い澱みや言い換えの意味などが見えてきた。音声を起こしてくれるサービスやアプリができたとしても、それに頼ったら落としてしまうだろうと思うことが見えてきた。

毎回そういった経験をさせてもらったのだけれど、特に鈴木さんの音声は、すごかった。怖かった。

■文字起こしで感じた、世界の絶望的なまでの寄る辺のなさ、不確かさ

鈴木さんのお話は軽やかな口調で、お茶目に感じるようなエピソードも語られるから、さらっと聞いただけだとクスッと笑ってしまうような楽しさがある。

けれど、何度も聞いているうちに、鈴木さんの語る世界の絶望的なまでの寄る辺のなさ、不確かさがわかってきて、どんどん怖くなった。やばい、これは考え続けたら狂う、と思った。私はそういう怖いものを、見ないように気をつけてきたのだと思い出した。

■小4のときの体験

いつそれを決めたか、どんな風に感じたか、はっきりと覚えている。小4の3月に、さいたま博に連れていってもらった日のことだ。

その日は母と妹と弟と、私の友達と私の5人でさいたま博に行った。いろいろと興味深いパビリオンがたくさんあった。いくつか見た。私は学研の「科学」を取って実験を楽しむような子どもだったし、リニアモーターカーに乗れるパビリオンもあったりして、けっこう楽しかった。ただ、友達はあまり興味がなかったようで、併設されている遊園地に行きたがった。まあ、私も異存はなかった。

母は私たちにお金をくれて、友達と私は母と妹弟とは別れ、遊園地に行った。楽しかったけれど、観覧車に乗って会場の様子を上から眺めて「ああ、こっちはいつでもできる遊びだけれど、あっち(パビリオン)は、さいたま博でしか見られなったんだよなあ」と思った。

その印象が強かったからか、興奮していたからか、その日の夜中、急に目が覚めてしまった。最初は「さいたま博に連れて行ってもらったのに遊園地で遊んでしまって、親の気持ちを無駄にしたなあ」と思った。

■生きていく上では、突き詰めて考えたら危ない「淵」のようなものがあると思った

そのうちに、私という存在は、何のために生まれてきたのだろう、周りに負担ばかりかけているじゃないかと思い始めた。そして、死とは、命とは、生まれてくることとは、意思決定とは……と考え始めてしまった。

轟々と吹き荒れる嵐の中で、誰もいない白くて小さな、音を吸収する小部屋に閉じ込められ、ドアや窓を開けるとものすごい風が吹き、眼下は断崖絶壁になっていて……みたいなビジョンが浮かんだ。(後日、吉本ばななさんの『白河夜船』内「ある体験」を読んだ時、同じようなシーンがあって、ものすごくびっくりした。)遊園地の中かパビリオンに、もしかしたら似たような部屋があったのかもしれない。

本当に恐ろしくて、たぶん声をあげて泣いたのだと思う。母がやってきて「どうしたの?」と聞かれた。もちろん小4なのでうまく言語化できず、息が詰まるほど泣くしかできなかった。母は「寂しくなっちゃったのね」と言った。そういうわけではなかったけれど、そうかもしれないと思った。何かを突き詰めて考えると、恐ろしいほど孤独で寄る辺のなく不確かな気持ちになるのだと思った。

そして、生きていく上では、突き詰めて考えたら危ない「淵」のようなものがあるから、そこは近づかないようにしようと決めたのだ。その結果、小3、4まで、私はとてもおとなしい子どもだったのだけれど、小5くらいから自分の意見らしきものを言えるようになった。考える範囲を狭めたからではないかと思う。

■アーティストしか持ちこたえられない勇敢さ

たぶんほとんどの人が大人になる過程で、ある程度そうやって、感度を下げながら生きてきているのではないだろうか。サリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』とか、藤野千夜の『ルート225』とかは、それを描いたものだと思う。

ところが鈴木康広さんは、今もずっとその恐ろしい淵を見つめ続けているような気がした。怖いよ、それは。アーティストしか持ちこたえられない、勇敢さだ。

ということで、記事はこちら。おっかなびっくり書いたけれど、私の感じた鈴木さんの勇敢さが伝わるといいな。おしまい。

大切なのは「自意識過剰」に気づいて、育てること【アーティスト鈴木康広】
http://qreators.jp/content/496

About The Author

プロフィールはこちら