吃音の話

1月から毎日1作品ずつ紹介している、私的児童文学100のリスト。3月6日は重松清さんの誕生日ということで、今日、1日早く重松さんの『きよしこ』を紹介した。実は私も、会社員2年目の頃、突然吃音になったことがある。

当時私は編集者で、吃音になったのは初めて1人で冊子全体の編集を担当することになったときのことだった。先輩が手取り足取り指導をしてくれたのだけれど、指摘の意図が全くつかめず、あまりの伝わらなさからヒートアップしていく彼女の前に行くと、どもるようになった。毎日必死で、出版できないのではないかと思った。

先輩も私も本当に弱り果てていた。見かねた上司の計らいか、その後私は異動になった。異動前に外出にかこつけて、先輩はとっておきのお店に連れて行ってくれて二人だけの送別会をしてくれた。異動後も担当し、やっとのことで作り上げたその冊子は何年も印刷され続ける息の長い商品になった。

先輩と私は、たぶん似ていたのだと思う。異動後はすっかりどもりもなくなり、今でも少しだけその先輩と交流があるけれど、ときどき当時の、今の私よりもはるかに若い先輩の夢を見る。吃音の日々は辛かったけれど、学びは本当に多かった。あのとき学んだことで、今ご飯を食べているようなところが、多分にある。先輩、あのときは困らせてごめんなさい、あんなにも一生懸命付き合ってくださって、ありがとう。

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