【雑誌を能動的に楽しむ】ノームコアはパリ化である。

雑誌全般の動向をリアルタイムで感じていくと、おばあちゃんになったときに何か語れるかもと思って、2014年末ごろから雑誌をいっぱい買い始めました。今まで雑誌はざーっと読み流すことしかしてこなかったのだけれど、せっかくなので2015年はもっと能動的に楽しもうかと思っています。

ということで。GINZA1月号の「ノームコアとはなんだったのか会議」がおもしろかったので、私も勝手に自分が捉えている「ノームコア」について書いてみます。(もうGINZA2月号が出ちゃったから焦って書く!笑)


normcore

◼︎私が考えるノームコアは「パリ化」である

ノームコアはnormalとhardcoreを組み合わせた造語で、ファッション用語として認識されている言葉。スティーブ・ジョブズのファッションのように、超普通な感じのファッションだと認識されている。でもGINZA1月号のなかで、佐久間裕美子さんはそもそもこのノームコアという言葉は「態度や精神性を表す言葉」であり、「自己主張の強いヒップスター的スタイルに対する反動として、風景や群衆にとけ込むような考え方がうまれた」と書いている。

私がこのノームコアという言葉と、それが指すものを知った時に思ったのは「ああ、これはパリ化だわ」ということだった。初めてパリに行った20代の頃、予想に反してパリの人々が流行のものを着ておらず、おしゃれじゃないと感じて拍子抜けした。しかし、30代になってわかったのは、パリの人たちは「普通におしゃれ」だということだ。流行り廃りではなく、自分に似合うもの、長く着られるものを大事に着る。その精神がおしゃれだと感じた。その「普通に、流行に流されず、自分流におしゃれ(ファッションだけでなく、その根底に流れる精神)」が、ノームコアだと思うのだ。

◼︎パリのおしゃれは、無理をしない

アメリカでも日本でもものすごく売れているらしい『フランス人は10着しか服を持たない~パリで学んだ“暮らしの質”を高める秘訣~』という本には、そのフランスの「普通におしゃれ」の精神とノウハウが描かれている。曰く、「フランスの女性は自分らしいスタイルを持っている」「(10着は大げさだけれど)少しの服を頻繁に洗濯して着回す」「一番良いものを日常で使う」「多くの物を持たずに片付ける」「ささやかな喜びを見つける」などなど。流行に左右されるのではなく、手に入るもので自分を彩る。無理せず人生を楽しんでいる。

フランス人の親戚の女性やフランス人女性の友達を見ても、この本に書いてあることは当たっていると思う。私の夫にも当てはまる。服はそれほど持っていない。流行り廃りにのっていない。今やすっかりパリジェンヌの18歳の姪っ子ですら、着飾りたい年齢だろうのに、それほど服を持っていない。

◼︎本当は「無理しない」のではなく、「無理できない」のだ

身も蓋もない話で恐縮だが、実はフランス人がおしゃれに無理をしていないのには理由がある。無理できないのだ。『フランス人は10着しか服を持たない』は、パリに半年間留学したアメリカ人女性が書いた本だが、ホストファミリーは珍しいくらい裕福な家だという記述がある。にも関わらず、ホストマザーを含めて家族全員が働いている。有閑貴族ではない。

夫の友人のフランス人は、パリのホストファミリーを斡旋する仕事をしているが、彼のリストには『フランス人は〜」の書籍に出てくるような元貴族階級のホストファミリーも数多く登録されているらしい。その理由は、貴族階級も、生活を楽にしたいからだと彼は教えてくれた。フランスは税金が高いので、先祖代々の不動産を保つのが大変なのだ。もし本当に「国際交流のため」等で元貴族階級が登録しているならば、賃上げの要求は出てこないはずだ。元貴族階級でもお金が大変なら、庶民もいわずもがな、である。

フランスの失業率は2014年10月の時点で9.97%(日本は3.71%。IMF調べ)。ここ20年くらいずっと高い。実質GDPで見た経済成長率は、ここ20年くらい2%以下。2012年から2014年からは0.3%程度(日本は20年の間は-5%から5%を行き来。2012年から14年は0.89〜1.52%)。日本よりもずっと景気が悪い状況が続いている。お金にゆとりがないというか、社会全体にお金があまり回っていない雰囲気がある。

◼︎経済が上り調子の時にしか、人はファッションに無理ができない

佐久間裕美子さんの『ヒップな生活革命)』によると、アメリカのノームコアにつながる意識革命は、2008年のリーマンショック後の、経済的に打ちのめされた後から生まれてきたものらしい。

経済が上り調子の時にしか、人はファッションに無理ができないのだ。「ちょっと無理しても、あの服が買いたい」という気持ちは、よっぽどのファッショニスタ以外は「明日(将来)は、もっとお金が入ってくる」という確信のようなものがないと持てない。

それは、11月末に行った香港でも思った。香港の経済成長率は乱高下が激しいものの、ここ10年は確実に日本よりも経済成長率が高い。そんな香港でお世話になったガイドさんは、毎日、全身ブランド品で決めていた。ブランドものも香港ではたくさん売れているようだった。(本土のお金持ちがバンバン買いに来るということもある。)私はバブル期の日本を知らないけれど、少なくとも、1990年代には日本にもガイドさんのように、ブランドで全身を決めている若者が今より多かった気がする。

◼︎「無理ができないなら、流行りのものより、似合うもの・長く着られるものを」という発想

「多少無理しても、あの服を買わなくては」とか「服はいっぱいあればあるほどいい」という発想が持てなくなると、流行りもので自分に似合わないものよりは、流行ってなくても自分に似合うものを買いたくなる。まだ若くて、自分に何が似合うかがわからない年齢ならまだしも。

ゆとりのなさを嘆いても、社会は変わらない。だったら、自分のできる範囲で楽しもうということが、フランス人のおしゃれの根底にはあるのだろう。

◼︎「ノームコア」が表す精神は、一過性のブームではない

フランスやイギリスは、低成長経済というか経済の成熟期・老年期に日本よりも先に突入した先輩だ。50代と20代の考え方が違うように、かつての日本や今の香港、シンガポールなどのように経済の成長期にいる国の人と、経済の成熟期・老年期にいる国の人の考え方は違う。

日本もアメリカも、どっぷり成熟期・老年期に入ったのだろう。50代が20代に戻れないように、もう元には戻れない。(か、戦争などの一大事が起こって、全部壊してもう一度始めるっきゃない。やだなー)となると、ノームコアは、たぶん一過性のブームではない。誰かが扇動する流行を鵜呑みにできる時代は終わったのだ。

ファッションなら、流行り廃りではなく、自分に似合うもの、長く着られるものを大事に着る。楽しみも、無理なく自分の手に入るものを味わい尽くすことで行う。人が良いということを、いったん自分の中で濾過して、それから選び取る。それが、私の考えるノームコアである。

なーんちゃってね。ない知恵を絞って考えましたん。おしまい。

18日追記。あんまりにも身の蓋もない書き方しちゃったなー。「大量消費社会の呪縛からの解放」とか「本当の自由を求める姿勢の現れ」とか書いておけば、アートぽかったのにー。

▼関係ないけど、飼い犬。風が強いとビクついてコーヒーテーブルの下に隠れます。▼

cassis20150117

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参考:
http://ecodb.net/exec/trans_country.php?type=WEO&d=NGDP_RPCH&c1=FR&c2=JP

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