【書籍紹介】季節の光と影が満る本 『ひかりの暦』(文・石井ゆかりさん、絵・松尾たいこさん)

「今年の冬は雪も多くて長かった。日本の冬は寒くて最悪だー」と、南の島で育った夫がいう。将来は南半球にあるモーリシャスと北半球にある南の島に2つ家を持って、1年中夏にしたいと妄想を語り合う。だけど、桜だけは見たい。一気に花開き、春の訪れを知らせる桜だけは。桜のシーズンだけは日本に戻ってこようと話して、はたと気づく。寒い季節を耐えていない状態で見たら、桜は今のように美しく見えるのだろうか。


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南国から桜だけ見に来ても、桜はきっと美しいだろう。白い花びらににじむ、ほんのわずかなピンク色。夜になると不思議とぼおっと怪しく光る花。でも、その美しさの味わいはきっと違う。桜を待ちわびる気持ち、咲いたときの「ああ、やっと、やっと春が来た」という気持ち、溜め込んでいたものが溢れ出すようなざわめく気持ちも含めて、桜はしみじみ美しい。

そう考えると、新緑の今の季節も捨てがたい。梅雨のあじさいも、夏の蛍が飛ぶ夜も、秋の紅葉も、冬のキリッとした空気や霜柱だって、味わいたい。「季節がある」ということは当たり前のようだけれど、地球上の一部の地域でしか味わえない贅沢品。
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そんな季節の移ろい、ありがたさ、悦び、光と影を感じられるのが『ひかりの暦』だ。著者は星占いで大人気の石井ゆかりさんと、たくさんの書籍の装丁とそのライフスタイルで人気のイラストレーター松尾たいこさん。季節を区切る二十四節気の説明とエッセイがイラストともに溢れている。
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文が響く。

 満開の桜には、ただ「美しい」だけでは済まされない、凄烈なものが潜んでいる。
 もし、花がただ「美しい」だけなら、私たちはあんなに大勢で表に出て、ハメをはずして飲んだり騒いだりするだろうか。
 私たちは、あの豪華絢爛の花が生み出す「異世界」にまぎれこみ、我を忘れて乱痴気騒ぎをすることで、己の中に潜むオバケのような、鬼のような荒ぶるなにごとかを、昇華しようとしているのではないだろうか。
 文字通り「咲きみだれる」花の姿に、自分の中に潜んでいて時に自分を飲み込もうとする強烈な「影」を映し見て、それを調伏するための祭礼として、私たちは「花見」に繰り出すのだろう。私たちの「影」は、無視されることを嫌うのだ。




イラストが心地よい。
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光に照らされた風景と、匂いと温度が表れるようなイラスト。

日本の季節は美しくて深い。季節ごとに、ページをめくりたくなる本である。

【書籍情報】
書籍名:『ひかりの暦」
定価:1,300円+税
著書:文・石井ゆかり 絵・松尾たいこ
出版社:小学館

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