著名人を罵倒することと、他人の高級車に傷を付けるパリジャンの行為に共通するもの

「日本の車はきれいだ。マイカーをよく手入れしているし、ポルシェやベンツが駐車場にとまっていても、誰も鍵で傷を付けない。」と夫が言う。嘘か誠かわからないが、パリで高級車をとめる場合、鍵でギーッと傷を付けられることを覚悟しておかないといけないらしい。

他人の車に傷をつけても、誰も得をしない。なぜそういうことをする人がいるのだろうと、夫と犬の散歩をしながら話した。そしたら、最近よく目にする、よくわからない論理と汚い言葉で著名人をTwitter上等で罵倒する心理に近いものがあるのではないかと思い当たった。
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■車に傷を付ける心理

フランスでは高級車の値段が高い。実際の値段はよく知らないけど、感覚値として。「ポルシェ? まさか!? どうしてそんなにお金持ちになっちゃったの?」っていう感じ。お金をうなるほど持っていなければ、ポルシェなんて買えないというのが人々の持つイメージのようだ。ちなみに、ヴィトンやエルメスのバッグとかも、本物のセレブかヌーヴォーリーシュ(成金)じゃなければ滅多に買わないと聞いた。だからフランスで高級車に乗れるか乗れないかは、信じられないほどのお金持ちになれるかなれないかの違いだ。

片や日本。みんながびっくりするようなお金持ちでない人も、好きであれば高級車やブランドのバッグを買う。ローンで支払い、生活を切り詰めて、掛け持ちでアルバイトをして、カップラーメンを食べながら買う人だっている。ほしい人はがむしゃらになれば手に入れられるのだ。だから日本で高級車に乗れるか乗れないかは、がむしゃらになるほど高級車がほしいか、ほしくないか。それだけの違いだ。

つまり、フランスと日本では、高級車に対する「ムリ感」「絶対に生涯手に入れられない予想」が違う。そういったなかで、パリで他人の車に傷を付ける人は、どんなにほしくても自分には絶対に高級車を所有できないと諦め、そのことに絶望し、怒りさえ感じているのではないだろうか。

■著名人を罵倒する心理

それと似たようなことが、著名人(権威のある人)を罵倒する心理にはあると思うのだ。

日本人は著名人(権威のある人)の言葉に弱いし、著名人の発言に素直に同意する人がフランスよりも多いようだと夫が言う。確かに、文章に説得力を持たせるための手法としてよくあげられているものに「偉人の言葉を引用する」というのがあるくらいだ。「子曰く……」の論語を一生懸命勉強させすぎではないかというのが夫の分析だ。フランス人は学校教育で常に稚拙でも良いから自分の意見を持つようにと言われるらしい。

ハフィントンポストの松浦さんも、「日本人は意見に賛同しやすく、建設的な反論を述べない人が多いため、豊かな言論空間を作るために工夫が必要だ」と言っていた。(と、日本人に有効な手法を使ってみる。)

高級車を手に入れた人が購入費用を捻出するために努力をしたのと同じように、著名人が著名人になった過程にもそれなりの努力がある。Twitterなどで著名人を罵倒する人は、その努力を「自分には到底できないものだ」と見なしている。著名人(権威のある人)の強い発信力に嫉妬し、どんなにほしくても自分には絶対にその発信力を持てないと諦め、そのことに絶望し、怒りさえ感じているのではないだろうか。

他人の高級車に鍵で傷つけるパリジャンの行為と、著名人をtwitter等で罵倒することには、「努力の放棄」と「諦め」が共通している。

■誰にでもポルシェは買えるし、発信力を持つ可能性はある

だけどさ、パリジャンだって本当に本当に高級車が買いたかったら、日本人の一部の人みたいに食費を削って仕事を掛け持ちして努力すれば、買えなくないと思うんだよねー。鍵で他人の高級車を傷つけているようなメンタリティーでは絶対に買えないけれど。だって、高級車を持つこと自体を憎んでいるみたいだもの。まっとうな努力をしてない。

twitterで著名人を罵倒する人だって同じ。そういう人の発言の中にも、一抹のキラッとした意見の芽があるかもしれない。世の中には絶対に正しいことなんて存在しないんだから、著名人の権威ある言葉にも、何か建設的に反論できることがあるかもしれない。

ただ、浅はかに汚い言葉を投げつけてしまうと、絶対に発信力を持つことはできない。だって、発信力のある人になったり、権威ある発言したりすること自体を憎んでいるようにみえるもの。そういうメンタリティーでは、発信力は持てない。意見の芽を深く掘り下げて考えてみて、いろんな本を読んだり他の人の意見を注意深く聞いたり、書き表す能力を高めたりする努力をしなくちゃ。

勝手に努力を放棄して諦めて絶望して、努力した人を攻撃するなんてむちゃくちゃ幼稚だ。本当に本当にほしくて既に持っている人を嫉妬して攻撃したいくらいなら、努力すれば良いじゃないー。キラッとした反論を真っ当な言葉で投げかけておもしろい議論が展開されれば、発信力を持てるようになるかもよー。

なーんてことを思いました。単に、汚い言葉の罵倒なんか見たくなくて、おもしろい議論が見たいだけ。

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