私たちは今、金田一京助さん、グリム兄弟や小澤俊夫先生のような人物の誕生に立ち会っているのかもしれない。

EDAYA JOURNEYというプロジェクトが、今ReadyForで資金集めを行なっています。代表は山下彩香さんというパワフルな女性。彼女は、フィリピンの山岳民族カリンガ族の無形文化の保護のために120万円の資金を集めようとしています。

「山岳民族なんて、自分とは関係ない」と思ったでしょうか。でも、ドイツのグリム童話を幼い頃に聞いて、何か心は動かされませんでしたか。何かを考えませんでしたか。もし何らかの影響があったのであれば、考えてください。ドイツとフィリピン、文化の価値に差はあるのでしょうか。

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現在、私たちがグリム童話を知ることができるのは、グリム兄弟があちこちを歩いて、昔話が語れる人を訪ね、話を収集したからです。(「童話」という言葉がついているのでグリム童話はグリム兄弟の創作と思っている人がいるかもしれませんが、グリム童話は基本的には創作ではなく昔話を収集したものです。)また、アイヌ語が消えてなくならなかったのは、金田一京助さんが膨大なアイヌ語の単語一つひとつを聞き取り調査したからです。

実は日本の昔話だって消えてなくなる可能性があったのです。昔話は口承文芸。おばあちゃんが話すのを聞いて嫁や子ども、孫が覚えて、次の世代に受け継いできたものです。でも今、口伝えで日本の昔話を知った人は本当に少ないのではないでしょうか。多くの人は絵本を読み聞かせてしてもらったり、テレビの「まんが日本むかしばなし」で日本の昔話を知ったはずです。

たぶん、口承文芸として昔話を覚えてきた世代は私の祖母くらいまで。私の祖母は昔話を語れる人でした。しかし、祖母は母や私に昔話を語ることを躊躇したと言います。「何だか戦前のことを話すのはいけないことのような気がして語れなかった」とは祖母の弁。おそらく、様々な価値観が急速に変わり、戦前教育などを含む日本的なものが急速に消えていこうとしていた時代だったのでしょう。

では、なぜその戦後のタイミングで完全に日本の昔話は消えなかったのか。いくつかの理由はあるでしょうが、大きな理由の1つは、グリム兄弟と同じように、日本の昔話を語れる人を探して、6万話もの昔話を文字に書き起して保存した小澤俊夫先生や稲田浩司先生のような人がいたからです。

「グリム童話があれば十分。日本の昔話なんか集めても残さなくても良かったのではないか」と思う人もいるかもしれません。でも、実はグリム童話と日本の昔話は、価値観が大きく違います。例えば自然観。グリム童話では自然と人間は交わらないものとして語られているのに対し、日本の昔話には「人間と自然の共生」とも言えるような話がたくさんあります。そう聞くと、昔話は現在でも何らかのヒントを与えるもののように思えてきませんか? 日本人の心の奥に根付く何かが、昔話の中には潜んでいるかもしれないと思いませんか?

昔話と同じように、音楽だったり、儀式だったり、伝統工芸を作る技だったりといったさまざまな無形文化が、そこに住む人々が代々大切にしてきた心の奥の「何か」を伝えているのだと思います。

小澤俊夫先生先生は、日本の昔話を集めただけではなく、口承で昔話を覚えて語れる数少なくなってしまった人の語りを動画に残し、昔話の語られ方を研究して昔話を語れる人を増やす活動を行っています。今、山川彩香さんがやろうとしているのも、まさに小澤俊夫先生と同じこと。

彼女の場合はカリンガ族の音楽や楽器作りの技を動画に残し、カリンガ族の子どもに伝統が引き継がれるように教育をしようとしているのです。カリンガ族には非常に豊かな文化があります。でも、私たちの祖母世代が戦後に感じた急激な変化よりも、さらに急激な変化にさらされ、あと何年かで今かろうじて残っている文化が消えてしまうかもしれないのです。カリンガ族の文化を残すために必要なのは120万円。

120万円がどのように使われるかは、こちらに書いてあります。たぶん、本当にギリギリの予算だと思います。

山下彩香さんが金田一京助さんや小澤俊夫先生のような仕事ができるかは、支援の結果次第。目の前で1つの文化が消えようと言う時に、3000円からの支援で山下さんの取り組みをサポートできるのであれば、やってみたいと思いませんか?

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